文献紹介
ブルネットからブロンドへ,他
pp.829
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203589
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哺乳類の毛の色素には二つの型がある。チロジンに由来する暗褐色あるいは黒色の色素(Eumelanin)と由来不明の黄色あるいは赤色の色素(Phaeomelanin)である。後者はトリプトファンから生ずるという説もある。メラニンはチロゼナーゼの反応によつて酵素的に形成される蛋白結合物である。メラノサイトは高度に分化した分泌細胞であつて,表皮真皮接合部と毛球とに存し,メラニン顆粒を隣接表皮細胞と生長する毛の皮質細胞とに与える。人種と色素沈着を起す疾患とにおける皮膚色の変化は,メラサイトの増殖よりはメラニン形成の増強による。メラノサイトの色素含量は多くの因子によつて支配されるが,大別すると(1)酵素のレベルで作用して細胞内色素量に影響を与える因子と,(2)生体の高いレベルで作用して細胞内メラニンの移動分布に影響する因子とある。酵素作用の変化は白子,フェニールピルビン酸性精神薄弱,重金属中毒における色素異常に見られる。下垂体のメラノサイト刺激ホルモンは人間および動物の色素細胞を暗色にし,牛の松果腺から分離されたメラトニン(Melatonin)は蛙皮膚のメラニン量を減ずる。人間毛髪の色素脱失はクロロキン治療の結果生ずることがある。本剤は赤色,ブロンド,淡褐色の毛髪にのみ作用し,黒色の毛髪の変化は見られていない。また皮膚色には影響なく,試験等内でのチロゼナーゼにも無影響である。
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