Japanese
English
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甲状腺機能亢進を伴つた限局性ムチン症の1例
CIRCUMSCRIBED MUCINOSIS WITH HYPERTHYROIDISM
吉田 良夫
1
,
笹井 陽一郎
1
,
長山 賢
1
Yoshio YOSHIDA
1
,
Yôichiro SASAI
1
,
Ken NAGAYAMA
1
1東北大学医学部皮膚科教室
1Dept. of Dermatology, Tohoku Univ. School of Medicine
pp.231-239
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203241
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I緒言
甲状腺機能低下症の一表現としての粘液水腫(Generalized myxedema)とは別に,皮膚に限局性にムチンの沈着する疾患のあることは,既に前世紀末から知られていた。このような症例の報告が追加されると共に,限局型においては甲状腺機能の低下することはむしろ稀で,多くは逆に亢進し,また時には全く正常であることが明らかになつた。一方所謂粘液水腫において,その汎発性たると限局性たるとを問わず皮膚組織中に証明されるムチンの本態に関しても各種生化学的,組織化学的検索が行われた結果,このものがピアルロン酸を主体とする酸性粘液多糖類よりなることが実証されるに至つた。かくて限局性粘液水腫の発症機序に対して,一は甲状腺を中心とする内分泌機能の面より,一はヒアルロン酸を中心とする粘液多糖類の組織内多量出現の面より,各種の実験と考察が行われ,幾多の仮説が提出された。
限局性粘液水腫はもとより稀な疾患ではあるが欧米では既に100例以上の報告が行われている。本邦では僅かに浜田1),宮崎ら2),谷奥ら3)(インド人例),鈴木ら4),及び黒沢5)と長島6)によつて報告された症例があるのみである。浜田例は甲状腺機能亢進を伴なわず,宮崎例は甲状腺機能僅かに低下し,しかも一側下肢にのみ限局した症例である。後三者はバセドウ病症状と共に下腿の限局性粘液水腫を示した。
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