Japanese
English
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皮膚疾患と組織マスト細胞
DERMATOSES AND TISSUE MAST CELLS.
田中 宏
1
,
佐藤 良夫
1
,
赤井 昭
1
Hiroshi TANAKA
1
,
Yoshio SATO
1
,
Sho AKAI
1
1新潟大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, Niigata University School of Medicine
pp.211-217
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203237
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1879年Ehrlich1)が最初に記載したマスト細胞(肥胖細胞または組織肥胖細胞)は,その原形質内に塩基性色素で異染(Metachromasia)を示す特異な顆粒を有し,多くの研究者によってこれがヘパリン,ピアルロン酸,ヒスタミン,セロトニン等を含有していることが明らかとなってきた。この細胞は皮膚,滑液膜,眼球,ウオルトン・ジエリーの如く結合織や粘液多糖類の存在する場所に種々の程度に見出され,生体内に広く分布していて結合織の生成や生体の防禦機能に関与するものと一般に考えられている。また腫瘍,炎症などの病的組織における組織マスト細胞の態度については,主として基礎的方面から知見が重ねられ,皮膚科領域では色素性薄麻疹における組織マスト細胞の特徴的な増殖はよく知られていることであるが,またその他の皮膚疾患についても散発的ではあるが幾つかの報告に接している所である。しかし乍ら,この細胞が生体にとって重要な役割を演じていると想像されるにも拘らず,現在尚組織マスト細胞の構造,機能,病的状態における意義などについては多く未解決の問題があるようである。我々は皮膚疾患における病巣内組織マスト細胞の態度について注目し,主として組織学的,細胞学的に,これを正常皮膚のそれと対比しつつ検索してきた。
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