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梅毒の非特異性血清反応,他
pp.1013
発行日 1961年12月1日
Published Date 1961/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203186
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- 文献概要
最近まで梅毒の血清学的診断に用いられた方法は免疫学的に非特異的であつた。すなわち抗原は組織抽出物ないし精製した燐脂質である。1949年Nelson&Mayerによつてトレポネーマ静止試験が考案され,この抗原はT.pallidumの生存株である。この試験の最も重要な使用は,臨床的に無症状でしかもリポイド抗原によつて陽性反応を示す患者に対してである。かかる反応は急性と慢性とに分けられる。急性とは数週から数カ月間反応を示すもので,その原因が種痘とか上気道感染とか明らかなものもあり,また個体の反応性が異常に不安定で,例えば妊娠のたびに陽性を示す婦人もある。慢性偽陽性は6カ月を越えるものとされており,この問題に強い関心が払おれている。Catterallの報告によると,リポイド抗原による反応陽性で,梅毒症状およびT.P.I陰性の患者を精査して,36名の婦人と18名の男子を慢性偽陽性反応者と認めた。これらを観察していくうち,婦人6名は全身性紅斑性狼瘡を生じ,1例は円盤状紅斑性狼瘡,2名はリウマチ様関節炎,2名はレイノー病,1名は溶血性貧血を発生した,男子においては1名が結節性動脈炎,2名が円盤状紅斑性狼瘡,2名がリウマチ様関節炎,1名が溶血性貧血を生じた。他にも同様の報告が現われ,今や慢性生物学的偽陽性反応は,屡々重篤な疾患に合併することが確立された。
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