--------------------
思いつくまま(9)
川村 太郎
Taro KAWAMURA
pp.377
発行日 1961年4月1日
Published Date 1961/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203042
- 有料閲覧
- 文献概要
福岡の癌シンポジユームの会場で,3年前の今頃NewHavenで一緒に居たF君に会つて,その頃のことを思出す。外は物凄い寒さ,それが華氏の何度だつたか記憶がないが,サッと降つた雨がそのまま道路に凍りついて非常に危険な状態になる。Instructorの1人が教科書通りの橈骨頭骨折をやつて繃帯を巻いてやつて来た。建物の中は大体25℃位に何時も保たれて居て,地の厚い白衣で働いて居ると汗ばむ位である。同じ部屋に英国生れの女医が居て,蛙の皮で松果腺のMSH拮抗ホルモンの定量をやつて居た。蛙の皮は摂氏20℃が最良の状態というのが彼女の強硬な持論であつて,私達の部屋だけは冬でもクーラーを廻して20℃位に『下げて』あつた。机の上のLillieのHistopathological Technicを開いて見て居たら,"20℃ is taken as average Ger-man laboratory temperature,25℃ as American"(p.79)というfoot noteを見つけた。アメリカ,西ドイツそして日本……日本は15℃位が丁度いいのか……などと考えてみたこともあつた。その頃私は鶏卵をいじつて居た。卵の殻に8/Ⅱというような日附けを書いておいたのを,アメリカ生れのセクレタリーが見つけてドクターは逆に書くと言つて笑つたので,英国生れの女医に聞いて見ると,英国でも日を先に月を後に書くと言つて居た。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.