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思いつくまま 独りごと
竹内 勝
Katsu TAKENOUCHI
pp.475
発行日 1960年5月1日
Published Date 1960/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202826
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- 文献概要
(1)病気になると医者にかかり金を払わなければならない。病気になつて働らけなくなり収入がなく,支払が倍加するから急速に貧乏になるのは当然であるが,医者が悪いから病気になつたのではない。出産のように予定した期日に喜びの費用を払う時は苦痛ではないが,往々にして医療費の支払は借金取り以上に嫌れる。保険が徹底し恰も医療費の問題が無くなつたように役人と組合幹部はいうけれど,少くとも家族はあいかわらず半額を窓口に納入しなければならない。保険細則は金をなるべく払わないように小役人によつて作製され,患者の利益を守ることを忘れている。稀に悪徳な医師があると新聞はデカデカと書くが,過剰治療を受け医師側はこれだけ患者にサービスしているとは誰れもいわない。わたくしの知己にも外来平均点数が基金の基準線以上のものは自動的に請求権を放棄しているものがある。あの不愉快な審査・監査に出頭することを思えば患者にサービスした方がはるかに良いと笑つている。保険は黒字になつたから掛金を安くすると厚生省は報じ,医療内容の改善を忘れている。皮膚科学会でも保険問題の検討を初め着々と成果を得られ出したことは喜びに堪えないが,甲表になると皮膚科の外来収入は激減し,国立病院であつても収支が危ぶまれる。
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