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思いつくまま(5) 偶感
伊崎 正勝
Masakatsu IZAKI
pp.1440
発行日 1959年12月1日
Published Date 1959/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202730
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10月27日,招かれて宮城県東北新生園の創立20周年記念式典に参列した。天候は快晴とは云えないまでも,比較的恵まれたものであつた。会場の園内宮城会館は,遠くは創立当時の医務課長であり,現在の長島愛生園長である高島重孝氏をはじめ,関係各位,在園患者多数によつて埋めつくされ,式典は定刻の10時30分に厳粛ななかに開始された。
上川園長の式辞に始まり,厚生省医務局長の告辞,つれづれの御歌斉唱,祝辞等と式典は進行したが,私はその間正面段上にあつて,会衆の大半を構成していた在園患者の様子をつぶさに眺めることができた。私はそこにかつてあつた人生に意義を見失つた,絶望のうちにただその日の生活を送る人の群をも早見出すことが出来なかつた。そこには,患者と療養所の職員との心のかよつた明かるい,あたたかい雰囲気がただよい,希望に輝いた患者の一人一人の顔があつた。私の心は自らあたたまりを覚え,その前途を祝福せずにはおれなかつた。
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