特集 皮膚泌尿器科診療の進歩〔2〕
特発性腎出血
岡 直友
1
1名古屋市立大学(医学部泌尿器科)
pp.1162-1167
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201576
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本症の概念
特発性腎出血essentielle Nierenblutungなる語は,Nitzeによつて唱えられたものであつて,臨床的並に組織学的検査によつてもその原因の説明出来ない腎出血の呼称である。はじめSabatier(1889)が出血と腎痛をあらわし,しかも腎の健全な場合をNévralgie hematriqueと呼んでから,原因の明らかでない腎出血は諸家の注目をひくに至つた。Scheede(1889),Senator(1890)は局所性血友病を以つてその原因を説明したが,根拠薄弱なため次第に信ぜられなくなつた。Klemperer(1897)は之を血管運動神経の緊張異常による血管神経性出血angioneurotische Blutungなりと説明した。その後本症の原因の探究は熱心に撓まず続けられ,見出された諸種の病理組織的変化の夫夫が本症の原因に擬せられ,殊に炎症説の賛成者が増加して来た。そうして腎出血には必らず何んらかの病変がなければならぬことが高唱され,殊にIsraelは本説の強調者の代表者ともいうべきである。かかるが故に,既にGottlieb(1925),Scheele u.Klose(1925)は本症をBlutung auskleinem Herdeと呼ぶべきであると唱えている。
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