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肝臓疾患,蕁麻疹のメチオニン・カルシウムによる治験例
増田 正典
1
,
田邊 茂
1
1京都府立医科大学川井内科
pp.597-599
発行日 1955年9月1日
Published Date 1955/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201497
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1.緒言
肝臓疾患や皮膚疾患におけるメチオニン,カルシユームの効果は広く認識されている。肝臓は蛋白質アミノ酸代謝,糖代謝,脂肪代謝,解毒作用造血作用,免疫体産生等々の重要な機能にあずかり,一旦この臓器に障碍が起れば,生体の生命現象に甚大な影響を及ぼすものである。肝臓機能障碍時には安静を図り,高蛋白,高炭水化物食餌,ビタミン,ホルモン投与等肝臓庇護に努めることは治療の要締であるが,近頃はアミノ酸の補給ということが宣伝されている。メチオニンは,唯一の含硫必須アミノ酸として,組織蛋白を合成し,エタノールアミンのコリンへの変化,及び逆反応によつて,燐脂質代謝に重要な役割を果し,更にロダン,メルカプツール酸形成,エーテル硫酸抱合等種々の解毒機転や,グルタチオン等の酸化還元系に関与している。その他,蛋白節約,クレアチン形成,毛細管透過性亢進の抑制,酵素活性化等肝臓機能の調整,ひいては生体生的機能に枢要な位置を占めている。病的肝では,実験的にも亦,臨床上でも,メチオニンの不足が考えられ,実際メチオニンの連続投与によつて,肝臓機能を補強し,正常化せしめることが実証せられている。
次に蕁麻疹であるが,その原因には,食餌,藥物,血精注射,物質代謝異常,神経系の障碍など身体内部に起因する内因性のものと,理化学的刺激に因つて起る外因性のものとがある。
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