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膀胱腫瘍の外科的療法の批判
楠 隆光
1
,
伊藤 秦二
1
,
長谷川 泰
1
1新潟大学皮膚科泌尿器科教室
pp.509-514
発行日 1954年9月1日
Published Date 1954/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201261
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第2次世界大戦後,アメリカに始つた膀胱癌に対して膀胱全剔除術を施行する傾向は世界的動きに迄発展した。そして,泌尿器科医のこの手術に関する経験が豊富になるに従つて,その安全性も向上し,今日では手術死亡率は8〜5%(Boemi-nghaus)位迄下降して,尿路の処理と言う面倒な操作をも含む本手術も,純粋に技術的立場からは充分に実用価値を認められるに至つた。そして手術後の遠隔成績を調査して,膀胱全剔除術の治療成績が従来の保存的外科的療法後のそれと比較し得る手術症例が増すに従つて,1昨年頃から漸く本法を真の治療効果の点から省る時期に入つて来た。
著者等の1人楠は,昭和24年に自己の第1例の手術例の発表以来,しばしば本手術に関する論文を発表しているが,臨床経験を重ねると共に,昨今漸く治療成績から本手術に対して批判を加え得るに至つた。東大分院での症例に関しては調査し難い点が多いので割愛して,茲には新潟大学泌尿器科教室に於て昭和25年3月以降昨年末迄に施行した手術症例に就て治療成績を述べてみたい。なおこの機会に,膀胱癌の場合の膀胱全剔除術に対する最近の学界の考え方を紹介すると共に,自己及び諸家の治療成績から到達した我々の私見をも述べたい。
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