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油溶性レスタミン吸水軟膏の理論並に臨床
小堀 辰治
1
,
久木田 淳
1
,
佐藤 直子
1
1東京遞信病院皮膚科
pp.518-521
発行日 1951年11月1日
Published Date 1951/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200616
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まえがき
我々は基礎膏の研究に於て,その重要なる1部として軟膏基剤中に含有せしめた藥物の皮膚吸收に關する實驗を行つた。その際,我々は極めて貴重なる一つの事實を發見することが出來た。即ち健康な皮膚から吸收され得る藥物は油溶性の藥物に限り,水溶性の藥物は全く吸收され得ないということである。このような事を指摘したものは我々の文献を渉獵した限りに於て,我々は始めてであると窃かに自負している。我々はこの實驗をサリチル酸とサリチル酸ナトリウムを用いて行つたそれはサリチル酸は水に難溶油脂に易溶であり,サリチル酸ナトリウムは水に易溶,油脂に難溶であるからである。この兩者を種々の軟膏に一定量含有させ人體健皮膚上に,一定の大さで24時間貼布し,尿中に排泄されるサリチル酸量を測定したのであるが,油溶性サリチル酸のみが健康皮膚を通して吸收され,水溶性のサリチル酸ナトリウムは殆んど健康皮膚を通して吸收され得ないことを實驗して,ほゞこの結論を得たのである。一方これ等藥物の皮膚吸收は軟膏基剤により異り,基剤として乳剤性軟膏を用うると,サリチル酸の吸收は極めて著明に見られ,從來の亞鉛華軟膏及びウイルソン泥膏に於ては吸收は行はれ得ないことを知つた。
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