特集 性病
賣笑婦の生態
雪吹 周
1
1吉原病院
pp.664-670
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200859
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1.賣笑婦の發詳について
賣笑婦なる名樗稱で呼ばれる婦人の生活型態は,その様相が種々様々であつたろうが,兎にかく非常に古くから存在したものと傳えられ又記録されている。
西洋では紀元前より所謂奴隷の形であつた。勿論命令に絶對服從する使用人,小間使の用をなすものから,美貌に惠まれた婦女は,高價にせり落されて,主人の命ずるまゝに閨房のつとめもしなければならなかつた。一見して畜妾制度華かだつた頃の一駒のようでもあるが,金銭によつて身をゆだねることは,結果から見れば賣笑と同様である。只不特定の異性と性交して金銭を得なければならない現在の賣笑婦よりも,特定の異性との交渉に限られているところがましなようでもあるが然し奴隷の場合は絶對に對象の選擇權を認められない慘めさがある。たとえあのような男はなめくじのように大嫌いだと思つても買われたからには抱かれなければならない。その點現在の賣笑婦は或る程度の選擇權を行使している。奴隷に比すれば幸いというべきである。一説には奴隷であつたマリアが妊娠してひそかに生れたのがキリストであるといわれているが,筆者はその眞僞をせんさくしようとは思わない。只賣笑婦の子でも,奴隷の子でも偉人,傑人が生れないとはいえない最もポピユラーな1例として見たい。
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