--------------------
耳を賣る人の話/造鼻術の一挿話
pp.89
発行日 1954年2月20日
Published Date 1954/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201084
- 有料閲覧
- 文献概要
南都にて或る人『某が耳を買ふと申すに,用途一貫文計の雑掌すべき事侍しを「さらば此の事營みてたべ,此の耳を買ふ」とて賣り終りぬ。其の後相人のありしに,件の耳買いたる僧とつれて行く,耳買ふを相せさするに「させる御福分見え給はず」と云ふに「あの御房の耳は買ひ取りて侍り。あの耳を某が耳にして,相して」と云ふに,「さては明年の春のほどには,御悦び候べし」と云ふ。
耳賣り僧を相するに「御耳こそ御福分は見え候へ。その外福分おはしまさず」と申す事思い出でられ候。耳賣たる故に,かゝる不幸の事有りと覺え候』と語りき。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.