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メルカプト醋酸ソーダによる2・3皮膚疾患の治驗
野口 義圀
1,2,3
,
田沼 葎
1,4
1東京大學醫學部附屬病院分院皮膚科
2現順天堂大學醫學部
3横濱醫大
4順天堂大學醫學部
pp.429-432
発行日 1952年9月1日
Published Date 1952/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200790
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最近における抗アレルギー療法劑は抗ヒスタミン劑を筆頭として多種多様なものが使用されている。我々は既にこれ等抗アレルギー劑の作用機序について卑見を述べた1)。その際アレルギーのアセチールコリン媒介説の立場から酵素コリンエステラーゼの態度が重視され,更にコリンエステラーゼがSH系酵素であるとの見解に從つて,これを増強すると老えられるSH系化合物の有敷性を指摘した。
さてSH系化合物,即ち活性のSH基を有するものとして從來はシステイン及び還元型グルタチオンが實驗的並びに臨床的に使用されたが,現在それ等の藥劑は入手困難であり,又有力なSH系化含物と稱されている2)チオ硫酸ソーダ(Sodiumthiosulfate,ハイボ)も活性のSH基を有するか否かについては論議3)があつて,理想的なSE化合物の入手は困難であつた。最近宮崎4)はSH基を2コ有するBAL(British Anti-Lewsite,2-3-dimercaptopropanol)を始めて濕疹,皮膚炎等の10例に試みて卓效を得,更に谷奥助教授等6)によつて詳細な研究が報告せられた。BALはSH系藥劑,特に重金屬の解毒劑として強力ではあるが,同時に可成りの副作用も随伴し2)7)8)9),更に油状の爲筋肉内注射に限定される缺點があるので,これに代るべきものを物色した。
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