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陰部外硬性下疳に就て
西村 長應
1
,
金澤 稔
,
高橋 達夫
1和歌山縣立醫科大學皮膚泌尿器科教室
pp.357-361
発行日 1950年9月1日
Published Date 1950/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200391
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1.緒言
梅毒性初期硬結はその發生部位によつて陰部初期硬結と陰部外初期硬結とに分たれ,後者は男子に於ては陰莖以外,女子に於ては陰部外の部位に發生する下疳を總稱し,更に陰嚢,陰阜,肛門周圍,大腿内側等陰部附近に發生する陰部周圍下疳と,口唇,乳房,手指,扁桃腺等の遠隔部に發生する狭義の陰部外下疳に區別される。一般に陰部外硬性下疳と云えば此の狹義の陰部外硬性下疳を意味する。然し私は本文に於ては陰部周圍下疳と狹義の陰部外硬性下疳の二つに就て記述する。
陰部外硬性下疳は本邦に於ては從來その生活樣式等の異なる爲歐米に比してはるかに僅少で比較的稀有な疾病とされていたが,終戰後歐米の風習が盛んに取り入れられ,性病の増加と共に急激に増加した傾向があり,我々のような小さいクリニツクに於てすら昭和22年より同243年月迄に陰部周圍硬性下疳か5例,陰部外硬性下疳11例を經驗してる。本邦に於ても陰部外硬性下疳に就て既に佐藤,宮崎,市川,大橋,柳原,齋藤等の諸氏によつて統計的觀察が發表され,その他多數の症例報告が發表されている。陰部外硬性下疳は梅毒の感染源特に周圍の人々に對する無辜梅毒の感染源として陰部硬性下疳以上に重大な意義があると思われるので,自己18症例(2例は昭和22年以前,16例は昭利22年以後)及び陰部外硬性下疳の大略に就て記述し,一般醫家の注意を喚起したいと思う。
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