特集 心臓リハビリテーションのエビデンスを極める
序文
心臓リハビリテーションのエビデンスを極める
明石 嘉浩
1
1聖マリアンナ医科大学循環器内科
pp.322-323
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1438200707
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心臓リハビリテーション(以下,心リハ)と聞くと「運動療法」を想像される方が多いであろう.確かに心リハを行ううえで運動療法は重要な要素であるが,9年ぶりに発刊された「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」の第1章の中で,心リハの構成要素は運動療法に加えて,患者教育,カウンセリング,医学的評価,そして疾病管理の5つの柱に組み替えられ,現在の心リハが再入院予防,フレイル予防,抑うつ改善にも寄与するべきであることがうたわれている.包括的な心リハプログラムを行ううえで重要なのは,多職種による多面的介入である.疾病の状態や重症度,社会的背景に関する評価を行い,各職種に応じた支援・指導を行うことが必要となるが,元来,多職種連携を得意とするこの領域において,それぞれの職種の強みを活かしたプログラム遂行が期待される.
20世紀半ばに,心筋梗塞後の患者が運動プログラムに参画することで死亡リスクを高めることなく,身体的・生理学的恩恵を享受できたとの報告以降,心リハプログラムが全世界で施行されるようになった.歴史としては浅いものの,本邦では未曾有の超高齢社会に突入し,心リハを要する対象疾患が純粋な虚血性心疾患から心不全に大きく変化している.そのような中であっても,世界中で行われているフェーズ2心リハプログラムからは,8割以上が運動療法プログラムを提供し,代替プログラムはほとんどみられなかったという点で,時代とともに柔軟なプログラム変革が進行していない問題点を含んでいる.コロナ禍で当たり前となったリモート診療が,この分野に応用できるのかなど,議論は尽きない.
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