特集 心疾患治療としての心臓リハビリテーション
序文
安達 仁
1
1群馬県立心臓血管センター・循環器内科
pp.164-165
発行日 2019年4月1日
Published Date 2019/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1438200242
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
心臓リハビリテーションは,心疾患に伴う寝たきり状態からの回復手段として1940年代頃から始まりました.しかし,昨今の目覚ましい治療法の進歩により,このような意味でのリハビリテーションは不要なものになりつつあります.そのため,病棟において心臓リハビリテーションを導入していない施設は少なくありません.
ところで,日常臨床で遭遇する機会の多い心疾患として安定労作性狭心症があります.狭心症に対しては,多くの施設で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施して「治った」と患者に言っておりますが,実はPCI後の患者の約20%が1年以内に再発することは患者には知らされていません.また,PCIに使用したワイヤーが血管を傷つけて新たな病変を作る可能性も患者には知らされません.一方,PCIを行わずに心臓リハビリテーションで治療すれば再発率は5%程度であり,どちらの治療法を選択するかというオプションを患者に提示している病院はほぼ皆無です.日本循環器学会のガイドラインに狭心症の約2/3は心臓リハビリテーションで治療可能という内容が記載されているにもかかわらずこの事実は変わりません.心臓リハビリテーションによる治療法と効果を熟知した医師が少ないことが一因であると思われます.いきなりPCIをされてしまうことは,患者にとっては不幸・災難以外の何物でもありません.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.