特集 COPD—実地診療にガイドラインをどう活かすか
序文
COPD—実地診療にガイドラインをどう活かすか
柴田 陽光
1
1福島県立医科大学呼吸器内科学講座
pp.142-143
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200630
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2022年4月に日本呼吸器学会から「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022(第6版)」が発行された.第6版においては,COPDに関する最新のエビデンスに基づき,第5版の記載を改訂している.安定期の治療に関しては,メタ解析からシステマティックレビューを行うことで,科学的に公平な治療推奨を行っている.安定期治療に関してより具体的となった.臨床の現場で広く活用されることにより,多くのCOPD患者に最善の治療が届けられることが期待される.しかし,新ガイドラインを取りまとめるにあたって,様々な臨床上の課題が残されていることも浮き彫りになったと考えている.
本邦におけるCOPD患者は,海外の患者に比して比較的健康状態が保たれていて長寿であると考えられている.しかし,COPDによる息切れや,フレイルに代表される全身併存症によってADLが低下した状態で生活されている患者は多く,健康寿命の延長に関しては,大きな課題として残されている.また,COPDの認知度は低く,診断率も低いまま推移している.COPDが未診断・未治療であるがゆえに,そのような患者を図らずもデコンディショニングさせてしまい,フレイルへと導いてしまっていることも少なからずあるであろう.さらに呼吸リハビリテーションの実施を学会から発信・推奨しても,実施できる施設は非常に限られており,極めて有効な治療であるにもかかわらず,リハビリテーションを必要とする患者に届けられているとは言い難い.このような問題点を一つ一つ解決していくことが将来的な課題であると考えられる.
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