特集 肺高血圧症 ガイドラインとニース会議提言を紐解く
Ⅲ.2群,3群,4群PH治療のポイントを紐解く
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の薬物療法
杉村 宏一郎
1
,
下川 宏明
1
1東北大学大学院医学系研究科循環器内科学
pp.676-680
発行日 2019年11月1日
Published Date 2019/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200312
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Point
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は予後不良の希少疾患である.外科的な治療が主流であったが,近年,バルーン肺動脈形成術やリオシグアトの出現により内科的治療が大きく変わり始めた.急性肺塞栓症とはリスク因子が異なることより,発症の機序には異なる要素の関与が考えられており,抗線溶性や慢性炎症などの機序の報告がなされている.肺高血圧症の定義を満たさないものの症状がある慢性血栓塞栓症(CTED)が注目されている.急性肺塞栓症よりCTEPHへの移行に関しては,まだ解決できていない課題である.
・CTEPHに対する薬物治療は抗凝固療法と肺血管拡張薬が中心となっている.抗凝固療法はワルファリンが推奨されているが,直接経口抗凝固薬に関しては,まだエビデンスは存在しない.リオシグアトは唯一保険適応となっている肺血管拡張薬であるが,現在,マシセンタンやトレプロスティニルを用いた臨床試験も行われており,内服薬による治療に関する新たなエビデンスにも期待される.
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