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健康日本21(第二次)(2012年)の目標項目に「睡眠による休養を十分とれていない者の割合の減少」があげられ,「健康づくりのための睡眠指針2014」も作成され,健康・医療において,また,健康寿命延伸においても睡眠の重要性が官民ともに取り挙げられるようになってきた.睡眠障害,睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing;SDB)は分けて論じられることも多いが,睡眠呼吸障害は不眠とともに睡眠障害のなかで最も頻度の高い病態であり,睡眠呼吸障害患者にも不眠が多くみられ,不眠患者と睡眠呼吸障害患者の合併も多い.また,睡眠呼吸障害イコール睡眠時無呼吸症候群と考えられる向きも多く,患者対応に不備を来すこともありうる.なぜならば,閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の標準治療であるCPAP装置は,閉塞あるいは狭窄した気道は開存するが,睡眠中の換気補助が必要な睡眠関連低換気障害(sleep related hypoventilation disorders;SRHD)患者にはCPAPのみではより低換気を増悪させる可能性もあるためである.OSAに比較して頻度的には少ないが,心不全患者や脳卒中後の患者にみられることが多い中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea;CSA)の一種類であるチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes breathing;CSB)の有無は,予後と関連することが明らかになっている.このように少なくともOSA,CSAとSRHDの存在(各病態のオーバーラップもありうる)を知り,その病態生理に合わせた治療法の選択をすることは呼吸内科,循環器内科,脳神経内科をはじめ多くの内科領域の医師にとって,重要な課題になってきた.また,SDB(特にOSA)の頻度は高く,このような患者が大きな手術を受ける機会も多くなった.したがって,麻酔医,外科医を含めたすべての医療領域に正確なSDBの知識が必要な時代になってきた.
このような背景のもと「実地診療に役立つ睡眠時無呼吸症候群(SAS)と睡眠関連低換気障害の現況と課題」の特集が組まれた.本特集では現在広く普及している,International Classification of Sleep Disorders 3rd(ICSD-3)に準じてのSDBの分類が示され,代表的なSDBである,OSA,CSBを中心としたCSA,SRHDの病態生理と自他覚症状が解説され,SDBによって引き起こされる間欠的低酸素の病態生理についても詳説されている.また,SDBの診断に必須な方法論についても学べるようになっている.OSA,CSAと生活習慣病の関連は重要なので,心血管,代謝疾患との関連について解説が加えられている.睡眠時無呼吸の治療についても重要なので,小児も含めて,機器,口腔内装置,耳鼻咽喉科的治療,減量,体位変換治療法などにつき詳しく解説されている.OSAと不眠はいずれも頻度が高く,オーバーラップすることもあり,また,CPAPなどの機器使用後も出現してくることがあるので,その対応法も解説していただいた.最後にトピックスとして,SDBと運転リスク,CPAP遠隔医療を含む最近の話題が解説されている.また,指定難病肺胞低換気症候群に関してはSDBの管理が極めて重要なので,その項を設けた.
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