特集 「咳嗽」と「喀痰」を診る
序文
金子 猛
1
1横浜市立大学大学院医学研究科呼吸器病学
pp.372-373
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200155
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医療機関を受診する患者の主訴のなかで,最も多いのが咳嗽と喀痰である.平成28年に厚労省が全国の世帯および世帯員を対象に施行した国民生活基礎調査において,世帯員が有している自覚症状として,「せきやたんが出る」が,「腰痛」「肩こり」に次いで,男性では3番目に多かった.これは,慢性に咳嗽と喀痰症状を有しながら生活している国民が非常に多いことを示している.
喀痰は咳嗽と密接な関係にあり,気道過分泌の病態では,咳嗽と喀痰が生じる.気道過分泌が生じると,粘液線毛クリアランスの処理能力を超え,これを咳クリアランスが代償することで,湿性咳嗽が出現する.したがって呼吸器疾患の病態を理解し,治療戦略を講じる際には,咳嗽と喀痰を切り離して考えることはできない.咳嗽と喀痰は大変身近な症状であるが,一方では,呼吸器疾患における最も重要な症候である.咳嗽と喀痰の背景には多彩な病態が存在しており,そのなかには重症度や緊急性が高い疾患も含まれていることにも注意を要する.
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