連載 症例で学ぶ非結核性抗酸菌症・12
喀血を伴う肺非結核性抗酸菌症の治療戦略
八木 一馬
1
,
川島 正裕
1
,
倉島 篤行
2
,
長谷川 直樹
3
,
森本 耕三
2
1国立病院機構東京病院
2結核予防会複十字病院呼吸器内科
3慶應義塾大学医学部感染制御センター
pp.526-533
発行日 2017年8月1日
Published Date 2017/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200071
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症例1 60代女性,160cm,40kg
【現病歴】幼少期(1歳時)の結核既往あり.X−3年5月に健康診断の胸部X線で異常陰影を指摘されたために当院呼吸器科外来を受診した.胸部CTでは左肺上葉上区,舌区,下葉,右肺中葉に小葉中心性粒状影,すりガラス様陰影,気管支拡張を認めた,肺非結核性抗酸菌症が疑われた.喀痰から二度Mycobacterium avium(M. avium)が陽性となり肺非結核性抗酸菌症〔肺M. avium complex症(肺MAC症)〕と診断された.その後,ティッシュが赤く染まる程度の血痰を認め,血痰の悪化傾向を認めたため,X−3年10月よりクラリスロマイシン(CAM)800mg/日+リファンピシン(RFP)450mg/日+エタンブトール(EB)500mg/日による治療を開始した.X−3年12月に片手一杯くらいの喀血を二度認めたため,精査加療目的で入院した.安静,止血剤投与により経過観察し,造影胸部CTでは明らかな出血源は認めなかった.入院4日目に施行した気管支鏡検査では左舌区に赤褐色の出血と左下葉支への垂れ込みを認めたが,活動性の出血は認めなかった.CAM+RFP+EBに加えてアミカシン(AMK)点滴を導入し,入院12日目に退院した.退院後は外来でCAM+RFP+EBを継続し,AMK点滴は週3回のペースで合計4カ月間施行した.少量の血痰を認めることは時折あるものの,大量喀血のエピソードなく経過し,喀痰培養の陰性化も続いていたため,CAM+RFP+EBはX−1年10月まで2年間継続して終了した.
【既往歴】肺結核(1歳),溶連菌感染後糸球体腎炎(12歳)
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