連載 Dr.長坂の身体所見でアプローチする呼吸器診療・9
スターリング曲線とスターリングの式(equation)
長坂 行雄
1,2
1洛和会音羽病院
2洛和会京都呼吸器センター
pp.518-525
発行日 2017年8月1日
Published Date 2017/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200070
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スターリング,正しくはErnest Henry Starling(1866〜1927)は英国の生理学者で,ホルモンという言葉を創った内分泌学の創始者でもある.1911年(明治44年)に来日もしたという.彼が創案し,循環器学で頻用されるスターリング曲線(Frank-Starling law)も,水分平衡の仮説であるStarlingの式(Starling equation)も100年以上を経た今でも浮腫や胸水貯留の診療に不可欠である.
1980年代は,生理学の主要研究テーマが古典生理学からバイオロジーへと大きな転換を遂げた時代である.筆者はカリフォルニア大学のサンフランシスコ校,CVRI(Cardiovascular Research Institute)で低酸素時の肺微小血管圧の研究をしていた.指導を受けたStaub教授は古典生理学の泰斗で,最大の業績は,コロラド大学のPetty教授らによって提唱されたARDS〔adult(acute)respiratory distress syndrome〕の本態が,血管透過性亢進による肺水腫と明らかにしたことである1).これはスターリングの式を解くことでもあった.
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