特集 若手医師のための呼吸器診療スキルアップ—苦手意識を克服しよう
Ⅰ.総論
若手医師は呼吸器診療で,どこが難しいと感じ困っているのか?
青島 正大
1
1亀田総合病院呼吸器内科
pp.182-189
発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200025
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はじめに
筆者が初期および専門研修のトレーニングを受けた当時の虎の門病院呼吸器内科では部長の故・谷本普一先生が,問診・身体診察・胸部単純X線写真をもとにコモンな疾患から希少疾患までをピタリと診断されていた.まさに“神診断”といえるすごさを目の当たりにした鮮烈な記憶がある.先生が晩年に出版された「開業医のための呼吸器クリニック」(医学書院刊)の冒頭の一節には「最近,呼吸器疾患の診断は,器機の使用や検査に偏重し,問診,視診,聴診など症候学がないがしろにされている傾向がみられるが,診断には臨床医の目や耳など五感によるこれら基本的な診断技術が,極めて重要である」と書かれている1).とても重い言葉である.
現代の“神診断ができないわれわれ”には,当時から長足の進歩を遂げた検査・診断技術があるが,どの診療ツールを使えばよいのか,また得られた結果にどのような重み付けを行い解釈すればよいのか,日常臨床は迷いの連続である.網羅的な検査は日常臨床においては「考えることをやめた姿勢」のように感じられる.また医療資源の有効利用の観点からも回避すべき姿勢である.
本項では当科の研修医へのアンケートをもとに「呼吸器診療において,若手医師がどのようなことに悩んでいるか」ということを,実際の症例をもとに提示していく.
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