連載 患者さんは人生の先生・12
幸せの星の数を数える
出雲 博子
1
1聖路加国際病院内分泌代謝科
pp.2403
発行日 2014年12月10日
Published Date 2014/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200194
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患者さんを診ながら、人が幸せであるためには何が一番大切かということを考える。当たり前だがお金ではない。わたしの勤める病院には経済的に豊かな患者は少なくない。しかし、裕福でも、家族に疎んじられている人は幸せに見えないし、豊かでなくても夫婦仲良く手をつないで支え合いながら帰っていく老夫婦はとても幸せそうである。ある中年女性患者は血糖が悪化するたびに高い個室に入院できるほど経済的に恵まれていながら、心が安まらず血糖が乱高下する。ある定年退職後の男性は株価が上がって面白くてたまらないと毎晩夜中までパソコンを見ているため、睡眠不足でアドレナリンが上昇し、血糖、血圧、腎機能も悪化して透析に近づいていく。
健康であれば幸せと感じられるかというと、そうとは限らない。ある健康な50歳台の更年期の女性はホルモン補充でせっかくホットフラッシュが改善しても娘婿や孫の成績のことなど、不満が多く安らげない。また、ある方は後ろから車を追突されたとむち打ち症を理由に訴訟を起こした。頸部MRIでも特に問題はないが、精神的ショックを訴えて訴訟を続けている。ストレスで血糖も血圧も上昇し、精神のみならず身体まで悪くなっていく。
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