Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
悪性脳腫瘍患者の予後は非常に悲観的であり,glioblastomaの5年生存率はわずかに2.4%である6,38,54).悪性脳腫瘍の治療は頭蓋内にはリンパ節がないために他臓器への転移は考慮する必要がなく,治療予後は局所のコントロールを如何にするかに依存している.予後を決定する最大の要素は組織の悪性度であるが,治療に関する因子としては放射線療法や化学療法等の集学的治療が行われると同時に,手術時の腫瘍の摘出率を上げることが予後に大きく関与すると言われている6,7,25,38,40).The Committee of Brain Tumor Registryof Japanの報告によると,手術摘出率と生存日数の関係はmalignant gliomaの場合,全摘出で5年生存率は45.8%に,50%摘出で17.5%である38,54).すなわち,手術時に脳腫瘍の摘出率を上げることによって生存日数は延長する.
しかしながら,脳腫瘍の摘出は正常組織を含めた広汎摘出が脳の機能的な問題から限定されており,特に腫瘍がeloquent area近傍に存在する場合には正常脳組織の機能をモニタリングしながら,その機能を損なわずに,腫瘍組織だけを識別して摘出しなければならない.それだけに他の外科領域とは異なった腫瘍組織だけを摘出するための多くの試みがなされている.脳腫瘍は正常脳組織の中に浸潤しながら発育するために,腫瘍摘出時に正常組織と腫瘍組織を肉眼的に識別することは非常に困難であり,腫瘍組織だけを全摘出することはほとんど不可能である.これらの問題を解決するために,摘出術時のモニタリングとしてニューロナビゲーターの利用や,種々の蛍光色素を用いて手術中に正常組織と腫瘍組織を識別する方法が試みられているが,現在十分に満足できる方法は得られていない.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.