Japanese
English
総説
脳腫瘍とT細胞
Intracranial Tumors and T Lymphocytes
新田 泰三
1
Taizo Nitta
1
1順天堂大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Juntendo University School of Medicine
キーワード:
brain tumor
,
T cell
,
tumor infiltrating lymphocyte
,
T-cell lymphoma
,
germinoma
Keyword:
brain tumor
,
T cell
,
tumor infiltrating lymphocyte
,
T-cell lymphoma
,
germinoma
pp.823-833
発行日 1994年9月1日
Published Date 1994/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900679
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
中枢神経系組織はかつて免疫学的に隔絶された部位(immunologically priviledged site)とみなされ,他臓器とは全く異なった病態生理を示すと考えられてきた。しかし最近の免疫,分子生物学の進歩はめざましく脳神経系と免疫血液系とが意外なほど相互に関連していることが明らかになってきている7,36)。例えば,ニューロンを支持するのみと考えられてきたアストロサイトがある種の刺激でクラスII抗原(注1:主要組織適合性抗原で主にヘルパーT細胞と関係が深い)を発現し抗原提示細胞(antigen presenting cell;APC)として作用したり,また外因性のサイトカインにアストロサイトが反応し分化増殖するのみならず自らもサイトカイン(注2:リンパ球,血管内皮で合成分泌される液性因子である。インターロイキンも含まれる)を合成分泌し,腫瘍,炎症,変性疾患において脳内免疫反応に深く関与していることが挙げられる6,15,23,24,32)。一方,免疫担当細胞の中心を担うT細胞も脳神経細胞と緊密な関係にあることがこれまで示唆されてきた。例えば,歴史的にみて現代免疫学の幕開けともなった事実として脳組織を用いてマウスに免疫した結果得られた抗体がT細胞とも反応し両者に共通抗原(BAT;brain associated T cell antigen)が存在することが明らかになった。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.