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当院でも,脊髄の後方除圧をする場合,椎弓切除術の欠点を補うものとして登場した脊柱管後方拡大術を行い,さらに脊椎後方支持組織の変形や拘縮を防ぐことを考え,頸椎ではtension-band laminoplastyを行っています.
椎弓側方拡大形成術の際に,アパセラム®spacerを固定する絹糸を通すのに,成書に従うと,まずair drillで開けた椎弓の穴をキルシュナー鋼線の尖端を曲げて使い,骨髄層を貫通させますが,力をいれ難く,深い術野の脊髄の傍では精神的に神経質になります,次にアロンアルファを絹糸の先につけて硬くして,椎弓の骨穴を通すわけですが,骨髄のスポンジ層に引っ掛かり,いらいらさせられます.そこで,簡単な工夫をして上手に通しています.方法は「裁縫針の糸通し」を利用します.アルミの薄い板に菱形の極細いバネの鋼線が付いたもので,洋裁店,所謂100円市で,3個一組で買えます.それと,バックハウス布鉗子の先端の角度を少し伸ばしたものを椎弓形成術用に単品として準備します.まずair drillの尖端極小を使い型どおり穴を開けますが,穴は上下方向に楕円に3×2mm程の穴を椎弓側と外側塊の外板に開けます.先端を伸ばした布鉗子で穴をつまんで骨髄腔を通し拡げます.糸通しの鋼線部分を彎曲させて癖を付けておき,外板側から穴に差し込むと,骨髄のスポンジ層に引っ掛からずに通せます.これに糸を通して引き抜けばいいわけです.「裁縫針の糸通し」は閉頭の際の骨弁を固定する穴通しにも応用できます.尚,バネ秤による耐張力は平均1.2kgまで鋼線が抜けることなく固定強度を持ち,椎弓形成術の糸通しに使えます.消毒は鋼線の腐食を避けるために,エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌をして単品で準備します.医療器具として造る程のものでなく,かえって日常の物を工夫し利用して手術するのも楽しいものであり,手紙に書きました.
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