Japanese
English
連載 脳神経外科と分子生物学
血液脳関門の分子生物学
Neurosurgery and Molecular Biology : (series 5) Molecular Biology of Blood-brain Barrier
祖父江 和哉
1,2
,
浅井 清文
2
,
加藤 泰治
2
,
勝屋 弘忠
1
Kazuya SOBUE
1,2
,
Kiyofumi ASAI
2
,
Taiji KATO
2
,
Hirotada KATSUYA
1
1名古屋市立大学医学部麻酔・蘇生学
2名古屋市立大学医学部分子医学研究所生体制御部門
1Department of Anesthesiology and Resuscitology, Nagoya City University Medical School
2Department of Bioregulation Research, Nagoya City University Medical School
キーワード:
blood-brain barrier
,
tight junction
,
endothelial cells
,
astrocytes
,
molecular biology
Keyword:
blood-brain barrier
,
tight junction
,
endothelial cells
,
astrocytes
,
molecular biology
pp.561-569
発行日 1998年7月10日
Published Date 1998/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901584
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I.はじめに
血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)は脳の恒常性を維持する機構として,大変重要である.脳は他の臓器よりもさらに微妙に,血中物質の移行や物理・化学的な変化をコントロールされる必要がある.そのためBBBにおいては物質の移行が強く制限されると同時に,必要な物質は速やかに輸送されるシステムがいくつも存在しており,これらの構造・機能を総称する概念としてBBBは位置付けられる.
歴史的には,1885年にEhrlichがいくつかの色素を経静脈的に投与すると,他の臓器とは違い脳は染色されないことを発見したのがBBBの始まりである21).1913年には,Goldmannが静脈内に投与した色素は脳に移行しないのに対し,髄腔内へ投与すると脳へ移行することを観察し30),さらに1969年にBrightmanらはホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)およびLa(OH)3を髄腔内に投与したところ,これらのトレーサーはアストロサイトの足突起間隙および毛細血管の基底膜は通過するが,内皮細胞間のタイトジャンクションは超えないことを発見し8),物質の移行を制限しているのは毛細血管内皮細胞であることを明らかにした.その後,様々なBBBに関する研究が進められてきた.
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