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余りにも盛り沢山な改革案が提出されたことによって,現在わが国の大学が直面している事態の深刻さと改革の難しさとが図らずも浮き彫りにされた感がある.先日大学審議会から,「21世紀の大学像と今後の改革方策について—競争的環境の中で個性が輝く大学—」,との魅力的な表題で174頁に及ぶ中間報告が出された.堅い話になりそうだが,少し辛抱して頂くことにして,この中では以下の4つの大学改革の基本理念が示されている.すなわち,1.課題探求能力の育成—教育研究の質の向上,2.教育研究システムの柔構造化—大学の自律性の確保,3.責任ある意志決定と実行-組織運営体制の整備,4.多元的な評価システムの確立—大学の個性化と教育研究の不断の改善,である.これら各基本理念については,現状の問題点や具体的な改革方策が示されているが,些か業界用語的表現が散見され,読み終えるのに可成りの努力を要したのは,筆者ひとりに止まらないのではなかろうか.翻って,今回の改革案の提出を,われわれに身近な医学部・医科大学での医学教育制度に対する思い切った改革への契機としたいものである.昨今,わが国の行政改革のひとつとして国立大学の独立行政法人化が真剣に論議されているが,国立大学付属病院も例外ではない.どのような改革が行われるにせよ,制度の面からは競争的環境の整備と悪平等の是正,それに加えてわれわれ働く側のより一層の自助努力への意識改革が不可欠となろう.ところで,全国の医学部・医科大学学生の定員数については,ここ10年来その見直しが認識されながらも,いまだ全体の定員数の削減目標には到達し得ていないように見受けられる.こと医学教育制度ひとつを考えても課題は山積しているが,長期的展望のもと思い切った改革が,今こそ真剣に模索されなければならないのではなかろうか.今回提唱された4つの基本理念のうち,筆者は特に,“2.教育研究システムの柔構造化”に大きな関心がある.大学審議会報告は現状の問題点として,硬直した教育システムのため,社会の変化・多様なニーズに,大学が自律的に対応できないことを挙げている.
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