読者からの手紙
Infected subdural hematomaについて
中村 紀夫
1
1東京慈恵会医科大学
pp.195
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901166
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本誌23巻7号643ページに掲載された論文“慢性硬膜下血腫に生じた硬膜下膿瘍の1例”を,今日の画像時代に報告された非常に珍しいinfected subdural hematomaの臨床例として,大変興味深く拝見しました.私自身30年位前に慢性硬膜下血腫の研究を進めていた頃,僚友の故矢作保治博士がこの報告と似た症例をわが国で初めて学会に発表して注目を浴び,私自身も1例を経験し,以来常に関心を寄せてきたからです.勿論今日のような画像診断法のない時代には症例検討の根拠に限界がありましたが,当時私たちが調べた範囲では,既にこのような症例が外国でinfected subdural hematomaの命名で発表されていました.
一時我が国の脳神経外科医の関心を呼んだinfected subdural hematomaは,それ以後どういう訳か国内国外共報告症例を見ることがなく(もしかしたら私の見逃しか?),抗生剤療法の進歩にともなって発生しにくくなったのかと思っていましたが,今回の論文を拝見して“やっぱり”と言う感じです.今日慢性硬膜下血腫は人口の高齢化にともなって増加していると思われるので,糖尿病のような感染を起こしやすい余病をもつ人の場合,infected subdural hematomaを発生する機会が増え,早期の鑑別確定診断・治療が必要になってくるのではないかと心配するのは思い過ごしでしょうか?
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