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近代心肺蘇生の歴史
今日,われわれが施行している心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;CPR)法の原点は,1956年に電気的除細動,1958年に口対口人工呼吸,1960年に胸骨圧迫心臓マッサージがそれぞれ報告されたのが始まりである(表1)1).そして,これらの3つのCPR手法が連動し立ち上がった1960年をmodern CPR元年とした2).その50年後の2010年には世界でCPR 50周年記念式典や講演会が開催された.その後,1966年から1992年までにNational Research Councilがアメリカ心臓協会(America Herat Association;AHA)の主導で計5回開催され,CPRの意見統一が徐々になされていった.そして,1992年の第5回National Research Councilで国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee on Resuscitation:ILCOR)が創立され,2000年に心肺蘇生と救急心血管治療の国際ガイドライン(全世界統一)を作成し報告することが承認された2).これに向けてILCORは毎年2回の会議(エビデンスの検証と問題点など)が開催され,2000年AHA/ILCORから「Guidelines 2000 for CPR and Emergency Cardiovascular Care(ECC),心肺蘇生と救急心血管治療の国際ガイドライン」が報告された1).2001年には日本語翻訳版も発売され,CPRへの関心が臨床医・研究者・救急隊員・行政官・市民などの間で加速していった.そのなかで,心停止に陥った傷病者の社会復帰率を最大限に引き上げる方策として,地域社会がそれぞれ自らの救急医療体制を審査し,日々構築していくことが必要であるとした.この審査手法として,CPR関連の用語と定義を統一したUtstein(ウツタイン)ガイドライン1,3)による評価が推奨された.わが国では,この国際ガイドライン2000に大きな刺激を受け,院外心停止傷病者の国際規準の集計手法(ウツタイン様式)を用いて救急医療体制の検証を開始した.大規模研究は大阪(Osaka Utstein Project)から始まり,関東地方(SOS-KANTO)へ,そして2005年からは世界に類をみない日本全体の検証(総務省,消防庁)に至った.
ILCORは,国際ガイドライン2000報告に引き続き,5年ごとに新たな論文を検証し心肺蘇生と救急心血管治療の国際ガイドラインを改変していくこととした.2005年版・2010年版は,それぞれの国の医療制度・救急組織・協力体系・経済・文化・使用薬剤の違いなどを考慮し,心肺蘇生と救急心血管治療の国際ガイドラインとはせず,Consensus on ScienceにTreatment Recommendationsを加えたCoSTRとして報告した4,5).このため,2005年,2010年には,心肺蘇生と救急心血管治療のCoSTRを基に,それぞれの地域に適した心肺蘇生と救急心血管治療のガイドライン(2005年版はAHAガイドライン6),European Resuscitation Council,ERCガイドラインおよびAustralia Resuscitation Council,ARCガイドライン),[2010年版はAHAガイドライン7),ERCガイドラインおよび日本版(Japan Resuscitation Council:JRC)ガイドライン3)]が作成された.
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