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平成11年11月20日から23日にかけて,Interna-tional Conference on Recent Advances in Neurotrauma-tology(ICRAN)’99が台北で,Wen-Ta Chiu教授を会長として開催された.近年のICRANは,東京慈恵会医科大学の中村紀夫教授が軽井沢で開催されたICRAN’92をはじめ,Gold Coast,AustraliaのICRAN’94,Rimini-Riccione,ItalyのICRAN’96といずれもきわめて盛会であったが,今回のICRAN’99もそれに劣らず大変立派なものであった.直前に地震の被害が伝えられ,それが一番の心配であったが,全世界から250以上の演題と350名を超える参加者を得て,予想以上に実り多いものとなった.日本からも60名以上が参加した.Wen-Ta Chiu教授の細かいところまで行き届いた学会運営には,中国風の会場の雰囲気と相まって,多くの参加者が感嘆していた.
今回のICRANで特に強調されていた主題は,「頭部外傷の疫学と予防」,「頭部外傷治療のガイドライン」と「頭部外傷のニューロリハビリテーション」であった.「頭部外傷の疫学と予防」は,Wen-Ta Chiu教授の実績が高く評価されている領域である.Wen-Ta Chiu教授は,長年の頭部外傷の疫学的調査をもとにして,台湾におけるオートバイ利用者にヘルメットの着用に関する法律の制定まで尽力し,大幅に頭部外傷の重傷度を減ずることに成功した.そのことが具体的に報告され,参会者から賞賛を浴びた.わが国では,中村紀夫教授を中心とするかつての東京大学グループによるヘルメットに関する研究によって,20年以上前にさまざまな検討が加えられたと聞いている.台湾は蒸し暑い日が多いため,ヘルメットの着用を義務づけるにはかなりの苦労があったらしい.中村紀夫教授も,わが国で現在鋭意進められている頭部外傷データバンクの現況を含めて,「頭部外傷の疫学と予防」と題するすばらしい特別講演をされた.
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