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はじめに
開発途上国では脳神経外科医が少なく,モータリゼーションの悪循環を背景に交通外傷を中心とした頭部外傷患者の緊急手術に多くの時間が割かれています.そのため,脳血管障害,脳腫瘍,機能的外科の手術などには十分に手が回らないのが現状です.また,高度な手術を施行するための手術環境,手術器具,そして手術技術は未だ十分ではありません.その一方で,現地の若い医師の手術技術習得に対する熱意は大いに感じられ,手術を必要とする患者も多数存在します.筆者は2017年12月のケニアでの手術をはじめとして,これまでに延べ7カ国において合計13例の手術を経験する機会を得ました.これらの経験をもとに開発途上国における脳神経外科手術の現状を報告し,現地での手術における注意点について述べるとともに,日本の脳神経外科医が現地の脳神経外科医療の発展に対して今後いかに貢献できるのかを考察したいと思います.
私の開発途上国における手術経験はまた日が浅く,前述したように2017年12月のケニア・モンバサから始まり,これまでに延べ7カ国において合計13例(脳動静脈奇形4例,破裂巨大前交通動脈瘤2例[急性期1例・慢性期1例],破裂慢性期中大脳動脈瘤1例,破裂急性期前大脳動脈遠位部動脈瘤1例,下垂体腫瘍2例,小脳グリオーマ1例,小脳橋角部髄膜腫1例,三叉神経痛1例)の手術に携わってきました.2019年12月にケニア・ニエリを訪れて以降は,新型コロナウイルス感染症流行の影響により,海外での手術貢献の実績は停止しています.つまり,わずか2年間にかなり密度の濃い経験をしました.経験症例数は少ないのですが,それらを経験した上での手術の注意点について記したいと思います.
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