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先日,ある高名な名誉教授の先生とお会いした際,しみじみと「もっと若い頃に手術以外の趣味を始めるべきだった」とお話しされていました.専門分野を極めること,後進の指導に人生を捧げたが,それだけではなくプライベートも充実させなさい,とアドバイスをいただきました.脳神経外科が医師の専門の中でも過酷な分野であることは紛れもない事実であり,「働き方改革」が近年の国の重要指針であっても,現役脳神経外科医がゆとりある生活を実現することは容易なことではありません.本号の「扉」では筑波大学の松丸祐司教授が包括的脳卒中センター制度の本邦での導入について紹介されています.脳卒中は時間が勝負であり,いつ来るかわからない脳卒中患者に24時間365日対応するために当直体制を整備し,ほとんどの先生方が当直翌日も通常勤務を行っているのが現状と思います.そこで,脳卒中などの神経系救急医療では,同規模の病院群間でマンパワーに応じた輪番制を導入して,担当を曜日ごとに割り振れば,より効率的な脳卒中診療体制が少なくとも都市部では可能ではないかと考えます.本来,医療は社会のインフラであり公共性が極めて高いはずですが,いつしか高い収益,差別化が求められるようになってしまいました.少なくとも急性期医療は特定の医療機関に負担を集中させるべきではなく,マンパワーに応じた輪番制で負担を皆でシェアすることで脳神経外科医の生活の質の向上を実現したいものです.
本号では,総説欄において脊髄髄内病変の鑑別について大阪市立大学の髙見俊宏先生にご寄稿いただき,連載欄では最新の脊髄刺激療法と各社の装置の特性について大阪大学の齋藤洋一先生にご解説いただきました.研究では腰殿部痛,腰下肢痛の治療成績が報告されています.脳神経外科医の活躍するフィールドは幅広く,今後も大きく開かれてゆく診療領域であることを改めて感じます.多様な診療領域と,脳卒中などの急性期医療のバランスが取れた脳神経外科が理想であり,今はやせ我慢かもしれませんが医学生や若手医師が憧れるような余裕をみせたいものです.
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