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本号の「扉」では,東京女子医科大学の糟谷英俊先生から「小さな薬を巡って」というテーマで,ご自身の創薬の道のりを紹介いただきました.脳血管攣縮という,未だ完全にはメカニズムが解明されておらず,治療法が確立されたとは言えない,くも膜下出血後の重要な合併症に対するご自身の挑戦の歴史です.その道のりにおいては,知的財産戦略の失敗や当時の行政や企業の壁を経験され,おそらくは絶望感との闘いであったと拝察いたします.最近では国,行政のデバイスラグ・ドラックラグの改善や医療機器開発に向けた取り組みも活発化し,PMDAも以前とは比べ物にならないほど研究者,企業とも協力して国産医療機器の開発や創薬を推進する体制が整いつつあります.それでも研究の多くは動物実験で有効性が証明され,臨床のパイロットstudyで良好な結果が得られても,randomized studyでは期待された結果が得られないことがほとんどです.そうした挫折を繰り返しても,信念を持ってチャレンジをし続けることでしか,成功の女神は微笑まないのでしょう.しかし,チャレンジできる研究者は幸せだと思います.多くの人がチャレンジする研究対象自体がなかったり,チャレンジする前に諦めるのですから.信念を持って真摯に取り組んでいる姿勢は世界で誰かがみていること,諦めないことの大切さを教えていただきました.
また,本号では,研究論文として「腰椎変性疾患における下部尿路機能障害の評価方法としての残尿量測定再現性の検討」と題した大竹安史先生の論文をはじめ,臨床に役立つ症例報告が多く掲載されています.連載の「解剖を中心とした脳神経手術手技」では「内視鏡によるkeyhole transcranial approachのバリエーション」と題して渡邉督先生に,「脳腫瘍の手術のための術前・術中支援」では「大脳深部髄内腫瘍に対する開頭術,内視鏡手術」と題して荒川芳輝先生にご寄稿いただきました.ぜひご一読ください.
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