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Ⅰ.はじめに
てんかんとは,「種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であり,大脳神経細胞の過剰な発射に由来する反復性の発作」を特徴とすることがWHOで定義されている.脳には,ニューロン,グリア(アストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリア)など種々の細胞が存在するが,このうちニューロンのみが活動電位を発生し,脳機能の遂行過程における情報処理に主体的に関わると考えられ,神経細胞群の病態解明が研究の主座におかれていた.しかし,近年では,活性化したグリアが神経変性疾患の進行に積極的に関与している可能性が提唱され41,45),また片頭痛発生のメカニズムとされる大脳皮質拡延性抑制(cortical spreading depression)にもグリアが関連する可能性39)が示唆されている.てんかんにおいてもグリアの役割が注目されつつあり,電気生理学的な観点では,てんかん患者の広域周波数帯域脳波活動(wide-band electroencephalogram:wide-band EEG)がグリアとニューロンの活動を反映している可能性が指摘されている21).デジタル脳波計の進歩により従来のいわゆるBerger帯域に加えて,1Hz以下の低周波数帯域の活動,200Hz以上の高周波数帯域の活動,つまりwide-band EEGの記録・解析が可能となったことにより,DC電位(direct current shift[DC shift], infraslow),高周波律動(high frequency oscillations:HFOs)といった新たな情報が得られるようになった37).前者はグリア由来の脱分極,後者は神経細胞由来の活動電位を反映すると考えられ,ともにてんかん焦点のバイオマーカー候補として注目されている.また,発作時DC電位・HFOのこれまでの知見を併せて考えると,てんかん発作の起始には両者が密接に関連している可能性が考えられる.
本稿では,てんかん病態におけるグリアおよびニューロンの関与について,DC電位,およびHFOの発生機構,臨床的意義とともに概説していく.一方,これら両指標の記録・解析方法についても,今後多施設間で比較検討していくための標準化案を本稿後半で触れていくこととする.
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