Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
てんかんは,薬物治療によって70〜80%の患者で発作コントロールが得られる反面,残る20〜30%の患者では薬物治療に抵抗性を示すとされる10).日本神経学会のガイドライン上では,2〜3種類以上の適切な抗てんかん薬で2年以上治療しても,無発作期間が1年以下で,発作のために患者に不利益がある場合に外科治療の適応を検討するべきとされているが17),発作の消失のために切除すべきとされるてんかん原性領域を術前に直接的に診断する方法は今のところ存在せず,現状では,症候学,画像検査,電気生理学的検査などの複数の手段を用いて,切除すべき領域を間接的に推定している18).このてんかん原性領域を正確に同定することが発作抑制の鍵となるが,術後の発作再発も多く,いまなお課題は多い.
てんかん焦点においては抑制機構が破綻しているために,脱抑制と神経細胞の過剰同期が起こり,てんかん発作が起始すると考えられているが,ここで発生した異常放電は,脳内のネットワークを介して伝播し,さまざまな発作症候を出現させる.脳内は皮質,皮質下線維を介した複雑なネットワークを形成しており,てんかん発作波の伝播には,生理的なネットワークのほかに,てんかん原性によって形成された異常なネットワークも関与すると考えられているため,病態の解明をより困難なものとしている.これらのてんかん原性領域における異常放電の発生とともに,伝播に関わるネットワークを解明することは,本疾患の病態の解明に必要なだけでなく,臨床的な治療の方針を立てる上でも,非常に有用な情報となる.
Matsumotoらは,てんかん外科手術の術前評価のために,慢性留置した硬膜下電極から皮質に単発電気刺激を与え,皮質皮質間伝播と判断される短潜時の皮質皮質間誘発電位(cortico-cortical evoked potential:CCEP)を隣接および遠隔皮質から記録することで,皮質領野間の機能的ネットワークをin vivoで調べる手法を報告し12,13),臨床応用し,発展させてきた.CCEPはシナプスを介した領域間結合を反映すると考えられており12),てんかん外科手術に極めて有用な情報を提供し得る手法として,臨床応用が期待されている.本稿では,CCEPを用いたてんかん焦点診断とてんかんネットワーク解析について解説する.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.