書評
—馬場元毅:著—Dr. BABAのメディカルイラストレーション講座—完成度の高い手術イラストの描き方
吉村 紳一
1
1兵庫医科大学脳神経外科学講座
pp.130
発行日 2018年2月10日
Published Date 2018/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203688
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●ついに出た! 馬場先生のメディカルイラストレーション講座
私たち脳神経外科医は手術の記録を絵にして残すよう指導されます.私も研修医の頃に,「手術の絵はカラーで綺麗に描いてプレゼンするように」と指導されました.当時からビデオ録画はされており,プレゼン用に動画の編集もするのですが,それとは別に絵を描くように指導されていたのです.そして私は現在,当科の若手スタッフに手術の絵を描くことを推奨しています.それはなぜなのでしょうか?
一般的には動画は「動き」がわかりますし,慣れれば編集も早くなるので手間もかからないように感じます.それに最近では手術の技術が向上して,無血の術野で手術が進むことが多くなり,動画でもかなりのことがわかります.しかしそれでもなお,絵を描くことが推奨されるのはなぜなのでしょうか? それは,動画では「表と裏を同時に示すことはできない」からなのです.脳神経外科の手術においては,術者は術野に見えているものの裏側を常に意識して操作を行わなくてはなりません.そうしないと器具の挿入や構造物の牽引時に,裏側の神経や血管を傷つけてしまう可能性があるからなのです.そのために術者は,吸引管や鑷子を用いて一瞬,構造物の裏側を覗き,それを脳裏に焼きつけて手術を進めるのです.つまり,経験の豊富な術者は「透視」のようなイメージを持ちながら手術をしているということです.では,このようなスキルを身につけるにはどうするか? その近道が絵を描くことなのです.しかし,手術の絵の描き方など誰も指導してくれません.特に,もともと絵の苦手な人はどうしたらいいのでしょうか?
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