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Ⅰ.はじめに
頚静脈孔近傍を含む大後頭孔(大孔)外側部は後頭骨と環椎からなり,環椎後頭関節(atlanto-occipital joint:A-O joint)がある.その外側には頚静脈孔(jugular foramen)が,その後方には椎骨動脈(vertebral artery:VA)が,頚静脈結節とcondyleの間には舌下神経管(hypoglossal canal)があり,それらの中を静脈と脳神経が走る.大孔外側部から頚静脈孔近傍へアプローチする際,これらが障害物となる.
頚静脈孔近傍,延髄前面の斜台下部へは大孔外側部経由のアプローチが用いられる1-4,6,8).大孔外側部からのアプローチとしては,Herosのfar lateral approach4),Perneczkyのposterolateral approach8),Bertalanffyらのtranscondylar approach(後頭顆経由法)2),そしてSenらのextreme lateral approach9)などが有名である.このようにさまざまな名称で報告された大孔外側部からのアプローチの違いは大変理解しにくいが,基本的には開頭の骨削除範囲の違いと考えられる.松島らはA-O jointを傷つけずに顆窩(condylar fossa:CF)から頚静脈結節にかけて効率よく骨削除するように,また,開頭時の骨削除範囲をわかりやすく明確にするために顆窩経由法(transcondylar fossa approach:TCFA)というアプローチ名を提唱した7).TCFAは頚静脈孔を含む延髄外側部の病変を処理する際に非常に有用な手術法であり,本稿では大孔外側部の微小外科解剖を述べるとともに,TCFAについて解説する.
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