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Ⅰ.はじめに
第三脳室腫瘍の手術は一般的に難度が高い.頭蓋咽頭腫が第三脳室腫瘍の代表的疾患ではあるが,胚細胞腫瘍,毛様細胞性星細胞腫やグリオーマ,厳密には腫瘍ではないが海綿状血管腫もこの部位に発生することがある.現在では周術期死亡の症例はほとんどなくなったものの,視床下部の損傷や前交通動脈(anterior communicating artery:Acom)の穿通枝障害が生じると,術後に意識障害や記銘力障害などの重篤な神経症状が出現する.内視鏡下経蝶形骨洞手術の適応が徐々に拡大され,第三脳室腫瘍の手術戦略に光明をもたらすかと期待されたが,現段階では従来の手術成績を凌駕するような結果は出せていない.
第三脳室腫瘍に対する手術アプローチは,大脳半球間裂を剝離し前方からアクセスするinterhemispheric trans-lamina terminalis approach,脳梁を切開して側脳室経由でアクセスするtranscallosal approach,大脳半球間裂を後方から剝離するoccipital transtentorial approach(OTA),そして前述した経蝶形骨洞経由の(endoscopic)transsphenoidal approach(TSS)の4つに大別される.手術アプローチの選択では,腫瘍の発生母地に最も合理的に到達できるルートを第一に考える.腫瘍が第三脳室前半部から発生していればinterhemispheric trans-lamina terminalis,中間部または背側から発生していればtranscallosal,そして後半部から発生していればOTA,腫瘍のほとんどが脳底槽側にあればTSSが選択される.これにAcomの高さや視床線条体静脈の走行,術者の慣れなどの情報が加味されて最終的なアプローチが決定される.どのアプローチも名前はよく知られているが,実臨床では使用する機会が少ないため,想定される術野や手術手技の誤認が少なくない.例えばtranscallosal approachでは実際の第三脳室へのアクセスルートはtransforaminal,transchoroidal,interfornicealのいずれかになることが多いが,これらの違いを明確に説明できる術者はそう多くはないであろう.
本論文では選択された手術アプローチの体位から硬膜内操作までを,MRIや術中写真を用いながら段階的に詳述する.日本語論文ではあるが,手術アプローチ名やいくつかの解剖用語に関しては理解のしやすさから英語表記で統一した.また,内視鏡の役割や応用の実際に関しても考察する.
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