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●わかりやすいイラストを基に各種手術手技を簡潔にまとめた本格的手術アトラス
本書は脊椎脊髄の分野では最も広く購読されている『脊椎脊髄ジャーナル』に連載されてきた「イラストレイテッド・サージェリー」をまとめた手術書の第2弾である.1988年に創刊された『脊椎脊髄ジャーナル』に「イラストレイテッド・サージェリー」の企画が初めて掲載されたのは1996年4月号であった.第1回目では「中・下位頚椎部—前方進入法—」について平林洌先生により,豊富なイラストを交えてわかりやすく記述されている.その後も連載が続き,2002年7月に本連載が初めて集大成され,『脊椎脊髄の手術』(第Ⅰ巻)が発刊された.ここでは脊椎脊髄外科を専門とする医師が修得すべき手術手技が基本的なものから難易度の高いものまで精選され,さらに当時急速に広まっていた脊椎インストゥルメンテーションも掲載され,脊椎脊髄外科医にとって座右の書となった.第Ⅰ巻の刊行から早くも約13年が経過し,この間,手術法の変遷も著しく,新しい手術手技が次々に登場してきた.このたび,これらの手術手技を再びまとめ,『脊椎脊髄の手術 第Ⅱ巻』として刊行されることとなった.著者は現在のわが国を代表する“脊椎脊髄外科の達人”と呼ばれる整形外科医および脳神経外科医ばかりである.Ⅰ巻と比べてページ数が大幅に増え,充実した内容となっている.
私の脳神経外科の恩師である故・杉田虔一郎先生は,ご自身ですべての絵を描かれた『Microneurosurgical Atlas』(Springer-Verlag)という素晴らしい手術書を出版されている.こういった手術のイラストは実に多くの情報を外科医にもたらしてくれる.写真では手術の一瞬を2次元の画像として表すことしかできないが,優れた手術のイラストには3次元の内容のみならず,時間経過を含めた4次元の概念を盛り込むことも可能である.また,誇張と省略が加わることにより,術者の考え方をより正確に伝えることができる.最近の手術記録では,電子カルテが普及したこともあり,イラストが描かれることが少なくなり,文章のみの記載か,せいぜい写真の貼り付けで済まされることが多くなってしまったのは,大変に残念である.私自身の手術記録には,イラストのもつこういった利点から,今でも必ず手術の要点が一目でわかる自筆の絵を添付している.これは後で見返す際にも大変に便利であり,手術記録を読まなくても絵を見るだけで,その手術のポイントを頭に思い浮かべることができる.ちなみに,本書のイラストはすべて著者の描いた原画を元にイラストレーターが手を加えたものだが,著者の手術手技に対する考えがうまく反映されており,イラストを見るだけで手術のポイントが伝わってくる.
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