扉
職に順う
平川 公義
1
1京都府立医科大学脳神経外科
pp.721-722
発行日 1979年8月10日
Published Date 1979/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201015
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"When I do something right no one remembers, when I do something wrong no one forgets".アメリカの観光地では,このような標札がよく土産物屋で売られている.ひやかし半分に買い求めて,壁に飾ってあるのだが,考えるほどに,われわれ医師の,あるいは脳神経外科医の立場をよく表わしているではないか.仕事は,診療,研究,教育を問わず,職務の結果は良くて当り前であり,悪ければ,自分自身の気持は別にして,せめたてられる.手術の結果が悪ければ,最近の風潮として,争いに巻込まれる.
実際,このような争い事の相談を,毎月のように,持ちかけられて閉口している.最高裁公報課の調べによれば,医療事故による争訟継続数は,昭和44年の231件から,47年の452件,49年618件,51年は848件とうなぎ昇りに増加の一途をたどっている.先年,American Association of Neurological Surgeonsで,医療事故に関する調査が行なわれ,2,200のアンケートに1,400の回答が得られ,約50%の脳神経外科医が訴えられていることが判った(Clin. Neurosurg.,25: 673,1978).事故数は増加しており,収束の気配はない.その内容は脊髄疾患が過半数を占めるが,危険因子分析によれば,手術の結果が悪いということが第1位であった.
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