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本号も力のこもった多くの原稿をいただいた.村垣善浩先生からは光線力学的療法の作用機序や臨床,今後の展開について解説をいただいた.嵯峨健広先生からは,ICG videoangiographyの原理と脳神経外科手術についての論文をいただいた.既に本邦で汎用されているICGではあるが,現状の課題を克服することにより,定量的評価法となる日が待たれる.このように総説も,最近の編集方針に基づいて,読者にとって有益な最新の診断治療に関する充実した論文が掲載されている.ギリアデル®留置後の有害事象の検討を行った吉田論文や高精細体外視鏡とナビゲーションシステムを用いた手術法についてのテクニカル・ノートである長谷論文も興味深い内容である.
「扉」では,清水宏明先生が地域包括ケアや在宅医療を取り巻く問題について,大切な問題提起をされている.脳卒中の地域連携が声高に叫ばれるようになり久しい.病院を層別化し,急性期から回復期,そして維持期と,医療資源を効率的に利用するシームレスな地域連携により,たしかに脳卒中医療は改善したと思われる.しかし,それだけでよかったのだろうか.厚労省は地域連携に続く政策として在宅医療の推進を強く打ち出すようになった.これは清水先生ご指摘のように「経済的な必要性を前面に」立てたものである.しかし,この政策には皆が気づいていない,あるいは気づかないふりをしている暗点がある.日本は,高福祉高負担なのか,中福祉中負担なのか,あるいは低福祉低負担なのか,という社会モデルについての国民的コンセンサスがないままに,経済効率の議論のみで少子高齢社会に突入している.当然のことながら在宅医療を支える「介護の担い手世代」の人口は明らかに減少している.在宅介護の機会が増えることにより,「介護の担い手世代」が失う就職機会は経済損失につながる.また,核家族化の傾向も進んでいる.厚労省が政策説明で示すポンチ絵には,在宅医療の将来展望を見えなくするこれらの因子については描かれていない.
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