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編集後記
宮本 享
pp.326
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101394
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本号も力のこもった多くの原稿をいただいた.斉藤延人先生の「延髄の血管芽腫の手術」は実際に役立つようなわかりやすい記載となっている.連載の先天奇形シリーズでは五味玲先生が主な最近の話題もふくめて脳瘤について解説されている.「扉」では橋本卓雄先生が世阿弥のことばを引用しながら,脳神経外科医の自己鍛錬の要とでもいえる哲学を紹介されている.脳神経外科医の育成には,本人の素質・無心の懸命さ・指導者の3因子が大切と述べておられる.3つの因子の中で指導者が最後の因子としてそっと付け加えられているところが絶妙である.教育といえば,なぜかいつも教える側すなわち「教」が注目され,評価までされ教育プログラムが見直される.一方でわが国では「育」すなわち本人が伸びるのをサポートすることについては苦手なようである.幼少時より効率良く情報を詰め込まれて成人し,教えられることに慣れていて自ら学ぶ力が足りない若者がしばしばいる.教え込むとその分スタート地点は高いかもしれないが,自分で考える姿勢が足りないと新しいものは創れず,結局到達点は低くなる.それでは教育の逆効果である.人間相手の医療は教育システムを整備すれば事足りるほど甘くはなく,医学教育は大切であるが万能ではない.われわれは自分で考えて学んでゆく脳神経外科医を育まねばならない.
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