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本号も力のこもった多くの原稿をいただいた.泉本修一先生の中枢神経系原発悪性リンパ腫に関する総説は最近の診療の動向が詳述されている.水庭宣隆先生は脳動脈瘤クリップの特性についての実験を報告されている.日本では同様に脳卒中診療に従事する脳血管外科医と脳卒中内科医の違いは,前者が手術を行う技術集団であるという点に尽きる.脳神経外科医は手術に使用する機器の特性をよく知らねばならないが,無頓着なままに使用している人も少なくないと思われるので,読者に役立つと期待できる.くも膜下出血が離島において発症した際のドクターヘリ輸送に関する長崎医療センターの川原一郎先生の論文も掲載されている.背景医療圏に離島を抱える同センターならではの臨床研究である.脳動脈瘤続きになるが,扉では「脳動脈瘤手術八節」というテーマで五味玲先生が,脳動脈瘤手術におけるステップを弓道の心のあり方になぞらえて書かれている.一言でいえば,全体を俯瞰できる静かな心であろうか.昨今の煽動的ジャーナリズムに迎合するかのように,はしゃいだり騒いだりする人々のあり方を常々苦々しく思っている者として,五味先生の文に清々しさを感じた.
さて,本誌には症例報告も多く掲載されている.症例報告は貴重な症例の経験を読者と共有するという意義のほかに,ビギナー著者にとって論文投稿の登竜門としての意味合いがある.投稿原稿を査読していると,まともな日本語になっていない論文に時々遭遇する.学会で発表しているかのような口語体と論文としての文語体が入り混じっていることがある.その程度ならまだ可愛らしいもので,論文の体をなしていない論文も少なくない.本来結果で述べるべき内容を考察の中で述べたり,同じ内容を繰り返したり,冗長すぎて論文の主旨があいまいになっていたりする.これらは論理的考察が不十分であることの反映である.査読でその瑕疵を指摘しても,再投稿されてきた論文の構成にほとんど改善が認められない場合には査読者は困惑する.査読にかけた時間を返してくれと言いたくなる.果たして指導者はきちんと指導できているのか,あるいは指導者自身が論理的考察をできないのだろうか,と案じたりする.自戒の意味も込めて,指導的立場の先生方には適切な論文執筆のご指導をお願いしたい.
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