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Ⅰ.はじめに
光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)は,光感受性薬剤へのレーザー光線の照射(光化学反応)で発生した主に活性酸素の作用で治療効果を発揮する療法であり,皮膚疾患から各種の癌,そして感染症に至るまでさまざまな疾患に応用が期待されている,比較的新しい方法である.一般にPDTに用いられる薬剤は,病変への集積性をもつDDS(drug delivery system)的性質とレーザーなどの一定波長の光に反応し特定の物質を発生する性質との,2特性を有する光感受性物質である.この特性により,病変へのダブルターゲッティング(double targeting)—薬剤の病変集積と病変へのレーザー照射—を行う局所療法であり,全身あるいは周辺局所への合併症を低減しつつ治療効果を期待できる低侵襲治療である.PDTは手術・放射線・化学療法という癌3大治療と比較しても,薬剤・レーザーともに単体では正常組織障害性の極めて低い低リスクの治療である.また,視点を変えれば,薬剤と光という物理力を組み合わせた比較的新しい概念である複合治療の1つであり,薬事上も薬剤と医療機器を組み合わせたcombination products(2つまたはそれ以上の規制製品で構成される製品)に分類される.
2013年,脳神経外科領域において光線力学関係で2方法が薬事承認を受けた.1つは5-aminolevulinic acid(5-ALA,アラベル:ノーベルファーマ,アラグリオ:SBIファーマ)であり,悪性脳腫瘍に対する術中腫瘍組織の可視化(光線力学的診断,photodynamic diagnosis:PDD)14)の効能が認められ,もう1つはtalaporfin sodium(レザフィリン:Meiji Seikaファルマ)と半導体レーザー(パナソニックヘルスケア)によるPDTが悪性脳腫瘍に対して適応拡大となり,世界に先駆け承認された.本稿では,PDTの作用機序,臨床応用について概説した後,悪性脳腫瘍に対するPDTを中心に医師主導治験の役割とその結果,そして今後の展開を述べる.
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