扉
教育する心
阿部 弘
1
1北海道大学脳神経外科
pp.1271-1272
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202506
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厳冬の2月,毎週月曜日の第1講目である脳神経外科の講義が午前8時40分からはじまる.暖房がまだゆきとどいていない寒い講堂で,約20-30名の学生を前にして,筆者は講義を始める.X線写真を見せ,術前または術後の患者に短時間講堂に来てもらい,患者が去ってから,術中のカラースライド,ビデオテープ,ときには16mmムービーを供覧し,これでもか,これでもかと熱っぽく語りかける.9時15分くらいになると学生は60名前後となり,秘書が出席カードを配布する10時近くになるとやっと80-90名(定員116名)前後に達する.かくして,80%強の出席率に胸をなでおろしながら,筆者は10時20分に講義を終える.
医学教育の改善の必要が叫ばれてから,カリキュラムの改革,臨床実習・ベッドサイドティーチングの重視,視聴覚教育の導入などなど,遅々ではあるが,そしてまだ不満足ではあるが,少しずつ医学教育のシステムは改善されてきていると思う.少なくとも筆者が学生の頃に経験したような,ただノートを読み上げて学生に書きとらせるような講義は,今の医学部には存在しないと思われる.ハードウェアのほうも,新しい医科大学ほど,視聴覚教育システムの完備した素晴らしい講堂,立派な実習室を備えている.
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