扉
医学会雑感
駒井 則彦
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1和歌山県立医科大学脳神経外科
pp.1145
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202094
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昨今は研究会や学会が無制限に増加し,また,応募演題数も多く会長はその選択に苦労されている.国際学会でも同様,わが国からの応募演題数には驚かされる.一見,日本人は研究熱心であるかのように見えるが,独創的な研究が比較的少なく,模倣や追試が多い.なかには演題名を多少変更してはいるが,内容は各学会で聞き古したものを性懲りもせず発表しているものもある.学会の講演時間が短く,会場も幾つかに分かれているため,何回も繰り返さねば人々の印象に残らないのかもしれない.1つの研究を完成するには少なくとも2-3年は必要である.しかし,priorityを優先するためか,未完成の報告や,コマ切れの発表が多い,換言すればpriorityが侵害される危険性があるからともいえる.事実,他人の研究に尾鰭をつけて,わが物顔に発表している人もみうけられる.
独創的な仕事が少ない原因として,一つはノルマを課された受動的な,暗記を主体にした受験勉強があるのではなかろうか.毎年「全日本学生児童発明工夫展」なるものが催されるが,着想が面白く,創造性にとんだ作品は小学3年生までで,小学校高学年になると創意・工夫が消えてしまうらしい.現在の大学入学試験は記憶力を重視するような傾向にある.受験生は学習塾でノルマを課され,暗記に次ぐ暗記で次第にゆっくり考えることもなくなってしまう.
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