扉
Contact inhibitionとIndividual surface
松角 康彦
1
1熊本大学脳神経外科
pp.477-478
発行日 1985年5月10日
Published Date 1985/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202007
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細胞培養をmonolayer cultureで行うとあるところで発育が抑制されるが,癌細胞ではこの自然な抑制効果(contact inhibition)が欠如し,条件さえ整えば際限なしに増殖が続く.脳腫瘍では近年培養細胞を浮遊状態においてspheroidを作らせることが技術的に広く応用されるようになったが,元来乳癌から始められたspheroid培養法が,脳腫瘍の培養実験に向いているのは他の悪性新生物の培養細胞に比較して,脳腫瘍細胞にはまだ若干のselflimiting activityとしての効果があるのかもしれない.
閑話休題(それはさておき)われわれ日本脳神経外科学会会員のひとりひとりを単一細胞と考えるとき.その相互の関係はどのようであろうか.これは甚だ興味深い社会学的話題のように思われる有数百にも及ぶ演題を携えて徒党を組むように大挙して国際学会に上陸する有様など,まさにmonolayer cultureでのcontact inhibitionの喪失のように感じられるといえば,少々皮肉が過ぎるであろうか.わが国は人口も多いし,知的活動能力の旺盛な層が厚いため当然のことといえるが,このような現象の中には往年の「打ちてし止まん」と一億がなびいた頃を知っている世代には,単に優秀な文化立国の熱心な研究集団とばかりは考えにく単一思考型のエネルギーをつい感じてしまう.果してわが国の脳神経外科学の持つエネルギーはこれで良いのであろうか.
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